諏訪湖を舞台とした人形浄瑠璃文楽『本朝廿四孝 奥庭狐火の段』を諏訪の地で上演! 諏訪大明神と呼ばれた秘仏「千手観音像」所蔵の照光寺で

10月10日、11日の2日間、岡谷市にある照光寺にて人形浄瑠璃文楽の公演が行われます。人形浄瑠璃文楽とは、三味線音楽の義太夫節に合わせて人形操作を行う音楽劇。日本を代表する伝統芸能のひとつとしてユネスコ無形文化遺産にも登録されています。昨年開催した「諏訪神仏プロジェクト」の関連企画として行われた「SUWA×文楽」のこの公演は多くの人を魅了し、その大反響を受けて今年も開催が決定しました。

諏訪湖を舞台とした人形浄瑠璃文楽『本朝廿四孝 奥庭狐火の段』

上演される演目は、歌舞伎や文楽では定番の演目のひとつである『本朝廿四孝 奥庭狐火の段』。実はこの演目、今回上演を行う“諏訪”を舞台としたものでもあります。

『本朝廿四孝』は、越後の上杉謙信と甲斐の武田信玄の宿命の対決として名高い“川中島の合戦”を描いた作品で、全5段の中でも特に人気が高いのが『奥庭狐火の段』です。『奥庭狐火の段』は、ヒロインとなる上杉謙信の娘・八重垣姫の情熱的な恋を描いた物語。恋心を抱く相手である武田信玄の息子・勝頼を危機から救うために「諏訪法性の兜」を手に取り、クライマックスでは諏訪大明神が遣わした狐の加護で氷が張った諏訪湖を翔け抜けるという、壮大で奇想天外な演目です。

歌舞伎では、華やかな赤地の着物を纏った姫を「赤姫」と呼び、そのなかで特に気品があって美しい3人の姫を「三姫」と呼びます。『奥庭狐火の段』に登場する八重垣姫はその三姫のうちのひとり。舞台となる諏訪湖の湖上には、そんな八重垣姫の像も建てられているんですよ。

照光寺の秘仏・諏訪大明神と呼ばれた「千手観音像」

また、今回の会場となる照光寺は、かつて諏訪大明神と呼ばれた仏像「千手観音像」を所蔵する寺院。諏訪大明神は『本朝廿四孝』においても重要な役割を果たし、その仏としての姿である千手観音像は、武田勝頼の念持仏としても知られている仏像です。

秋の照光寺

照光寺

歌舞伎や文楽の定番で数えきれないほど上演されているこの演目ですが、国立文楽劇場の技芸員による文楽公演は諏訪地域では2回目。諏訪湖を舞台とする物語が諏訪の地で上演されること、八重垣姫と武田勝頼由来の秘仏が出会うことができる照光寺での公演…… 『本朝廿四孝 奥庭狐火の段』の拠点となり、深いご縁がある諏訪の地での鑑賞は特別なひとときです。

伝統芸能を通じて学ぶ、諏訪地域の歴史と文化

この公演をメインとする「SUWA×文楽」は、日本を代表する伝統芸能である人形浄瑠璃文楽の世界に触れながら、諏訪地域の独特な歴史や文化を多くの人たちに知ってほしいという思いではじまりました。特に、この地域に暮らす子どもたちや地元の方々に、生まれ育った土地を知ってもらうことで、ふるさとに対する愛情や郷土への誇りを感じてもらうきっかけになればという思いが込められたイベントです。

今年はその取り組みの一環として、文楽の解説と体験、地域の伝統芸能・御諏訪太鼓の奉納演奏や声明、そして諏訪湖の御神渡り神事を司る八剣神社の宮坂清宮司をはじめ、人形遣いの吉田勘彌さんなど計4人による諏訪湖の伝承と歴史をテーマにした特別対談も行われますよ。

声明(上)、体験(左)、御諏訪太鼓(右)

さらに地元・諏訪清陵高等学校付属中学校では、子どもたちに向けた特別公演も行われます。演目は『伊達娘恋緋鹿子 火の見櫓の段』。この公演では、物語に登場する町娘・八百屋お七の衣裳も見どころ。文楽や歌舞伎などに登場する町娘は、京鹿の子絞りの麻の葉柄の振袖を纏っているのですが、近年はその紋様をプリントで表現していたそう。しかし今回は、人形遣い・吉田勘彌さんの「本物の絞りの衣裳を見たい」という思いから、伝統的な手仕事による絞りと江戸本来の藍染、茜染によって、美術品とも言える江戸時代の本物の京鹿の子絞り衣裳が再現されました。

チケットの販売は9月1日から

メイン公演『本朝廿四孝 奥庭狐火の段』をはじめ、さまざまなプログラムを通して日本の伝統芸能に触れ、諏訪の歴史や文化を学ぶことができる「SUWA×文楽」。チケットの販売は9月1日の9時から先着順で一斉に行われます。昨年も発売後すぐに完売という人気ぶりでしたので、お早めの購入がおすすめです。

物語の舞台となる諏訪で、恋する八重垣姫が繰り広げるストーリーと国立文楽劇場の技芸員による珠玉の芸をお楽しみください!

冬の諏訪湖

【2023年9月14日追記】
・売り切れになっていたオンラインチケットの追加販売が行われています:10/10公演(10枚)/10/11公演(20枚)
・ぎん月にて展示中の、ピクセルモンタージュによる「八重垣姫像(木曽街道69次の下諏訪)」が公演当日に照光寺ロビーに展示されます
・笠原書店・ぎん月・照光寺でのチケット販売も残部僅少ながら継続中です

[SUWA×文楽]

開催日
2023年10月10日(火)、11日(水)
時間
18:00〜(開場=17:00)
場所
照光寺 光明閣(長野県岡谷市本町2-6-43)
チケット販売開始日時
2023年9月1日(金)9:00
お申し込み
チケット販売場所=照光寺、信州しもすわ温泉ぎん月、笠原書店岡谷本店
オンラインストア=https://sites.google.com/view/suwa-bunraku/
料金
5,000円(税込)
詳細ページ
https://sites.google.com/view/suwa-bunraku/

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