厳しい冷え込みが続く長野県茅野市の冬。雪が少ない分、空気がピーンと乾燥しています。
この寒く乾燥した気候が作り出すのが、諏訪地域の特産品である天然寒天(棒寒天)!!
ダイエット・健康食品として身近な寒天ですが、それがどのように作られるか知っている方は少ないのではないでしょうか。
茅野市で寒天を作っている有限会社イリセンでは、天然寒天の生産地を訪れるツアーを開催しています。
ツアーは通年で行っていますが、特に人気があるのが12月〜3月の生産シーズン! 昨シーズンはコロナウイルスの影響で3月は中止としたものの、12月〜2月で延べ6,000人がツアーに参加もしくは寒天直売所を訪れたそう。諏訪旅ライターおいちゃんも寒天作りを体験させていただきました◎
海藻→寒天になるまでの手間とんでもない
まずはおさらい。寒天は主にテングサという海藻を煮溶かしたものを固めて(ここで食べればところてん)、それを外で干したもの。
溶かして固めて干す。それが天然寒天です。(粉寒天は工場で作ります)
さあ工場見学!
まずは工場に届いたテングサを機械で洗います。
きれいになったテングサを、大きな樽にお湯を沸かして煮溶かします。
外には強力なボイラーが。
年季の入った樽。
中はこんな感じ。これはテングサを出した後、掃除のため再度お湯を沸かしているところです。
竹で作ったカゴに布を敷き、ドロドロになったテングサを濾します。
濾したものを冷やし固めると、生天(なまてん)のできあがり!
続いて生天を棒寒天の形に切り出します。
専用の道具でググッと。
これ楽しい。ぶるんぶるんの感覚が手に伝わってきます。切った生天を、麺状についたものがところてんです。
「ところてんを外に放っておいたらカサカサに乾燥して、試しにもう一回煮溶かして固めてみたらおいしかった」というのが寒天の起源と言われています。
なんでもそうですが最初に食べようと思った人はすごい。外でカサカサに乾燥した“元食べ物”をもう一回食べようと思った人、すごい。
切った生天を、外に干すための枠に入れます。「天出し」と呼ばれる作業。
ぶるんぶるん。逃げる〜。
ほいっ。
これであとは干せば完成! なのですが、ここまでの手間、とんでもなくないですか?
寒い冬、大量のお湯を沸かすだけで9時間かかることもあるとのこと。海藻が煮溶けるまでまた数時間、それを濾して固めるのに数時間……かつては20人以上の季節労働者が数ヶ月泊まり込みで作業していたそう。
イリセンさんでは寒天製造業の労働環境も変えるべく、さまざまな取り組みを進めています。
詳しくはこちら。
凍てつく寒さがつくる寒天
イリセンさんの寒天干し場。寒天がずらりと並ぶ様子は、茅野市の冬の風物詩でもあります。
通常は杭を打って斜めに干すのですが、イリセンさんは地面に直置き。これも寒天業界では新しい、労力削減のための取り組みです。
ぶるんぶるんだった寒天が……
朝晩の冷え込みで凍結→日中の太陽の光で融解、を繰り返し、だんだん乾いていきます。
寒く乾燥した茅野市ならではの伝統食品なのです!
寒天×観光で伝統を守る
イリセンの代表取締役の茅野文法(ちの ふみのり)さん。苗字も茅野!
地球温暖化や担い手不足、需要減など、寒天業界が抱える課題にアイディアで挑む若き経営者です。「寒天狩り」も寒天の伝統を守るための取り組みの一つ。
「天然寒天に実際に触れて食べてもらうことで、より多くの人に身近に感じてもらいたい」と話します。
ツアーでは寒天作り体験のほか、お楽しみの試食も! 工場に隣接した直売所でお買い物も楽しめます。
この場所、この季節にしか体験できない天然寒天作り。伝統産業を楽しく体験できますよ〜!
おまけ
イリセンさんの寒天でヘルシースイーツ。失敗した(ゆるゆるになっちゃった)けど、これはこれで美味でした◎
普段はごはんと一緒に炊いたり、水戻ししてお味噌汁やスープにぽいっと入れています。
ライター紹介:おいちゃんライター。信州松本生まれ、10歳から東京渋谷育ち。カルチャーショックを受け、小学生にして将来は地方移住することを念頭に生きる。大学卒業とともに縁あって茅野市に移住。諏訪旅1人編集部の編集長。 |