下諏訪町に、岡本太郎や永六輔など著名人も愛した洋菓子店があるのはご存じでしょうか。
「フレール洋菓子店」さんは下諏訪駅から諏訪大社春宮に行く途中、大きな鳥居をくぐり大門通り交差点の信号を曲がった先にある、昭和49年創業の洋菓子店です。
まずは、この風格のある外観に見惚れます。赤い看板のちょっと年季の入った色合いも味になっていると思いませんか? レトロな雰囲気がロケーションにピッタリだったのでしょう、映画の撮影にも使われたことがあるのだとか。
看板のマークは2人が並んだ横顔。
実は、創業当時はご兄弟でお店をやっていらしたのだそう。この2人は、ご兄弟なのですね。(今は、弟さんは岡谷に同じく「フレール洋菓子店」を出しています。)
店内はこんな感じ。昔の写真などを拝見しつつ、ケーキや飲み物をいただくこともできます。
いざ、岡本太郎が愛した味
さて、私のお目当ては『岡本太郎さんが愛したケーキ』。店主の宮坂一さんに伺って、出していただいたのがこちらのケーキです!
ザッハトルテ! なるほど、おしゃれですね(個人の感想です)。
フレールさんは昔ながらの手作りの味を守っていらっしゃるので、今日私がいただいたザッハトルテも、1980年に岡本太郎さんが召し上がった味と同じなのです。なんだかそれだけで、妙にうれしくなってしまいます。
「この味がお好きだったんですねぇ」なんて、思わず口に出してしまったりして……。
さて、ケーキのお味はと言いますと、スポンジ部分が軽めで、案外あっさりとしています。上に乗っているハート型のチョコレートが可愛らしいです。
このチョコレート、ガナッシュの中身のような食感で、口に入れるとほどけてしまう柔らかさでした。
ザッハトルテというお菓子は、本来は生地にあんずジャムを塗ってあるものなんだそうですが「うちのは、名前を借りただけ。オリジナルだね」とご主人は笑っておられました。
そんなくだけた感じも、地域のケーキ屋さんという親しみに繋がっていそうです。
地元愛あふれる焼き菓子たち
フレール洋菓子店のもう一つの名物がこちら、『万治の石仏クッキー』。
この、なんとも言えない素朴な表情。
敢えてカッチリ作らないようにしていらっしゃるのだそうです。クッキーの生地とも相まって、思わず“にやり”としてしまう可愛らしさです。
クルミとゴマの2種類のクッキーが入っており、2枚入りで190円というお値段がうれしいです。ちょっとしたお土産に喜ばれそう。
その他にも、ちょっとしたおつかいものに人気の焼き菓子たちをご紹介します。
『かりんケーキ』やあんず・信州りんごをつかった『諏訪そだち』は、諏訪大社に名前を付けることを許可いただいた『諏訪大社献上菓子』。
一つずつ購入できるので、ついつい何種類も買ってしまいます。
商品名の手書き表示が、また良い感じ。
焼き菓子、実はまだまだ種類がありました。
味噌や日本酒を使った焼菓子は、信州・諏訪のお土産としても喜ばれそうです。
親子二代で地元に愛されるケーキ屋さんを続けること
現在は、息子さんである恵一さんとお2人でお店を切り盛りされています。
恵一さんは東京の高円寺にあるケーキ屋さんで修業をされて、23歳頃に下諏訪町に戻ってきたそう。
今のところはお父さんの味を守っていらっしゃるんだとか。「昔からの味が好きで、この味を求めて買いに来てくださるお客様がいますからね」と。
「うちは、地域に唯一の洋菓子店というところから出発して、周りにケーキ屋さんが増えた時期もあり、減っていった時期もあり……。そういう波を越えて残っている店だから、大切にしたいですね。」とお話しくださいました。
ご兄弟2人で始めた洋菓子店、今、お店のマークのように、親子が横に並んでお店の伝統を守っています。
ライター:石田 名保子40代、ワーママ、一児の母。自然豊かな環境と都市の便利さが絶妙に交じり合う、諏訪市に魅力を感じて家族で移住してきました。 |