2021年5月26日、諏訪大社に珍しい光景が広がりました。諏訪大社の境内に居並ぶのはお坊さんたち……神社にたくさんの“お寺さん”が集まったのです。
この日、お坊さんたちが諏訪大社下社秋宮に集まったのは、あるプロジェクトのため。そのプロジェクトとは「諏訪大社上下社神宮寺由来仏像一斉公開プロジェクト」です。
諏訪大社と一体だった仏教
プロジェクト名にも入っている「神宮寺」というのは神社に付属して建てらたお寺のこと。仏教のお寺と神道の神社はルーツの異なるものですが、「神様仏様」と並べるように、日本では「神仏習合」という形で神道と仏教は融合していました。
諏訪大社もかつては上社・下社ともに神宮寺が一体化しており、多くの仏像や仏教建築が存在していました。
仏教と神道が現在のようにはっきり分離したのは明治の新政府が誕生してから。神仏分離政策によって神宮寺も廃止となり、その流れのなかで「廃仏毀釈」と呼ばれる仏教文化財の破壊も行われました。
諏訪大社でもこのとき仏教建築が失われ、神宮寺は消えてしまったのですが、そのときに一部の仏像、仏具などは守られ、周辺の寺院に受け継がれることになったのです。こうして受け継がれた仏像などは、現在も多くの寺院で大事に保管されています。
大社とお寺、150年ぶりの再会
今回のプロジェクトは、こうして周辺寺院に残された神宮寺由来の仏像などを、諏訪大社と寺院が協力して、一斉に公開しようというものです。この日は、来年2022年秋の公開実施に向けた正式な立ち上げにあたり、周辺寺院のお坊さんなどプロジェクトメンバーが秋宮に集まり、参拝や会見を行いました。
明治政府成立により仏教と神道が引き裂かれてからおよそ150年。参加する寺院のひとつ、照光寺の住職・宮坂宥洪さんも「こういう形で参拝するのは初めて」と話していました。
ですが、諏訪大社の北島和孝宮司が「難しいことはない。本来の形に戻るだけ」と話すように、日本では仏教と神道はもともと長い歴史のなかで自然に同居していたものでもあります。長らく当たり前であった光景が戻ってきたような様子に、プロジェクト実行委員会の会長を務める原正直さんは「すでに目の前に神仏が習合しているよう」と話していました。
2022年秋、一斉公開…60年に一度の秘仏も
今回のプロジェクトによって仏像などが一斉公開されるのは2022年10月1日から11月27日を予定。現時点で19の寺院と、諏訪大社を含めた3つの神社に加え、諏訪市博物館などの博物館が参加しており、それぞれで仏像や仏具などを公開します。
公開される仏像はこれから正式な決定に向けて調整が行われていますが、諏訪大社下社の本尊であった照光寺の「千手観音像」や、上社の本尊であった仏法紹隆寺の「普賢菩薩像」など、貴重な仏像が数多く公開される予定となっています。照光寺の「千手観音像」はもともと60年に一度しか公開されない秘仏。それを見ることができる今回は、本当に貴重な機会になります。
また、一斉公開期間中は期間限定の御朱印が各お寺で頒布されるほか、建物や仏具などを紹介する「テラカ(お寺カード)」「ヤシカ(お社カード)」といったアイテムも用意されます。
諏訪大社とお寺の歴史的再会ともいえるプロジェクト。諏訪という土地にとっても大きな意味を持つ、今から楽しみなプロジェクトです。
URL:https://suwa-tabi.jp/feature/suwa-shinbutsupj/