☑️茅野市の壮大な草原は、大きく農業と関係していた
☑️お殿様に献上された信州米沢米
☑️美味しいお米や野菜が買える『みどり市』
茅野市は,八ヶ岳と霧ヶ峰の麓に位置する高原のまちです。
私が生まれ育った豊平米沢地区(標高900m)は、霧ヶ峰から流れる伏流水や豊かな土壌、昼夜の寒暖差などで美味しいお米が穫れます。江戸時代には、高島藩のお殿様の御膳米として献上されていました。
普段何気なく見ているこの風景も、長い時間をかけて私たちのご先祖さまの暮らしの積み重ねの結果生まれたものです。ちょっと視点を変えていつものまちをみてみると、今まで見ていた風景が特別な存在として目に映ることもあるかもしれません。
この記事ではそうした気づきを得るきっかけになればいいなと思い紹介します。
<草原の景色は農業と深く関係していた>
さて、茅野市の特徴というとまず思い浮かぶのは「山」、「森」、「田んぼ」というような自然に関するワードではないでしょうか?
今回はそうした茅野市をイメージづける自然の景観を規定してきた農業にフォーカスした話題を書いていこうと思います。
現在私たちの見ることができる景観になるまでに大きく5つの大きな変革があった(図1)ことを紹介したいと思います。今回はそのうちのひとつ「化学肥料の導入」についてお話します。20世紀初頭に導入されはじめ、戦後爆発的に普及していった化学肥料は劇的にこの地域の景色を変えました。さまざまな要因がありますが、この変化は長い歴史の中で非常に大きな出来事です。
さて話をはじめましょう。歴史的に茅野市を含む八ヶ岳南西麓の地域一帯のことを山浦地方(図2)と呼ぶことがあります。山浦地方では古くから人が農業をして暮らしていたと考えられています。
この山浦地方の農業を特徴づける要素のひとつに広大な採草地の存在があげられます。この地方では火山性土壌のため乏水性が強く、リン酸分の欠乏が甚だしいため、刈敷・落葉・堆肥・厩肥・草木の灰などの草肥(有機質肥料)を大量に投入することで農業生産を維持してきました。刈敷はカッチキと呼び、ハンノキ・クリ・ナラなどの若い枝葉を切って水田の緑肥とするもので,農業生産には欠かせない存在でした。
この地域は、長野県内では白馬山麓などの積雪高冷地についで高い水田率を示している。つまり田んぼがこの地域の農業の特徴であり、その農地を耕すためには広大な農用林野の存在が必要であったことが採草地の景観を作りあげました。
<農業の発展には恵みが豊富な山が必要だった>
刈敷は、水田1反(≒300坪)に対して20把ほど必要であるといいます。山浦地方の北端に位置する米沢地区では水田が184.7ha存在していました。山浦地方全体だと3600haという非常に広大な面積なります(農林省長野統計事務所資料)。
馬1頭で1度に6把運ぶことができることから、単純に計算しても米沢地区だけで6,000頭分、山浦地域全体では12万頭分の刈敷を毎年消費していたことになります。そのような稲作の必要の結果生まれた景観が現在のような霧ヶ峰の草原です。
田んぼがあればそれだけで米が育つわけではなく、そのバックグラウンドに水と栄養を蓄えるヤマがあったことがこの地域の農業を支えることになりました。
今でこそ、八ヶ岳中腹は森に囲まれた別荘地が拡がっていますが、つい数十年前まで広大な草原でした。地元の農家さんが馬を連れて何度も往復して草刈りをするのが日常の仕事でした。それが1938年頃から硫安・過リン酸石灰などの化学肥料の使用が普及し始めたことが転機になりました.第2次世界大戦時中には草肥の使用も一度は復活したものの、戦後に複合肥料なども普及し始めたことで草肥の必要性は著しく減退してしまいました。現在では化学肥料を使わないで栽培すると「有機農業」と呼んで区別するような状況になっています。
ここまで、簡単に農業の歴史について触れてみましたが、こうした歴史の片鱗を垣間見ることができる場所をご紹介します。ビーナスラインを走って車山に一番近い車山肩駐車場に停めて散策すると図5のような標識が建っているのが見つかると思います。
この標識を掲げているのは農業協同組合などになっていると思います。これはその所有者である農業協同組合に属する麓の集落が草刈りのためにヤマを歩いて登ってきていた歴史があったということを物語っています。この標識は霧ヶ峰の道路を走っていると、ときどき見つけることができます。ぜひ探してみてください。
<美味しいお米、野菜を買うならココ!>
最後に、霧ヶ峰の麓である米沢地区には、霧ヶ峰の水や栄養の恩恵を受けて育ったお米や野菜を買うことができるお店があります。それは、みどり市というお店です。
このお店は私が小学生だったころに、小学校で育てた野菜も置いてくださるなど、子どもたちとの交流も大事にしてくださる優しさに溢れた方々が運営しています。
みどり市で販売される信州 米沢米は、『長野県 原産地呼称管理委員会』の認定を受けています。
農薬と化学肥料の使用を厳しく制限して栽培され、さらに食味の専門家による審査に合格したお米です。
この米袋の裏には、米澤村の校歌が書かれています。なんと作詞は北原白秋、作曲は山田耕作という豪華な方々です。
私も小さい時に何度もC Dを聞いていた思い出があります。
是非とも、みどり市にお越しください。
詳しくは以下のリンクよりお願いいたします。
米沢地場産物直売所みどり市 https://midoriichi.com/
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ライター紹介 帶川恵輔茅野生まれ・茅野育ち 茅野市の土と水と人に育てられ大きくなりました。兼業農家•林家の息子です。 山によく出没しますが、野生動物ではありませんので見つけたときはどうか優しく声をかけてあげてください。間違っても撃つのだけはやめてください。 |