上諏訪駅から歴史を辿る散歩道!in温泉寺

☑️かつては高島藩主の菩提寺だった温泉寺
☑️神宮寺のご神体『お鉄塔』を祀る
☑️国史跡に指定されている藩主のお墓

こんにちは。皆様、諏訪を楽しんでいらっしゃいますか?
私は、結婚を機に諏訪に来て10年越えした滝と申します。
諏訪には沢山素敵なところがございますが、今回は私のとっておき、お気に入りのお寺『温泉寺』をご紹介させて頂きます。
上諏訪から温泉寺まで徒歩13分。歴史を楽しみながら歩いていきましょう!

<高島藩主の菩提寺だった温泉寺>

上諏訪駅からほど近く、旧道を茶臼山に向かって進んでいくと、右手に大きなお地蔵様がおられます。その手前に、「南信名勝地温泉寺」の石碑があります。

今でこそ開けた市道ですが、戦後までは、ここからお寺までの約250m、杉の木が両側にそびえたつお寺の参道だったそうです。

お地蔵さんの奥にある、イナバウアー並みに反り返った石碑には「薬師如来名湯」の文字が刻まれております。

この上諏訪は悠久の温泉街でして、多くの方が湯治のため利用されたそうです。

諏訪湖間欠泉センター。上諏訪温泉は1日15000キロリットルもの湧出量を誇る。

病を治したいという願いを込めて、薬師如来様を小さなお堂でお祀りしていたのが、『温泉寺』の起源だったそうですよ。

ちなみにこの地点のすぐ傍に空き地がありますが、上の湯(かみのゆ)という身分の高い人専用の温泉だったそうです。
もしかすると諏訪のお殿様もこの温泉に浸かって癒されていたのかもしれませんね。

私が描いた想像図

さて、参道に高くそびえたつ神秘的な杉並木を想像しながらお進み頂くと、右手に観音堂が見えてきます。

こちらは、お隣り伊那市高遠が生んだ日本のミケランジェロ“名工 守屋貞治”(1765〜1832)と、その弟子たちの作品です。貞治は、温泉寺の歴史に欠かせない願王(がんのう)和尚様に師事し沢山の石像を作り寄贈しており、現在もこの観音堂、境内、お墓、庫裏あちこちで、端正で繊細優美な貞治ワールドを楽しませてくれています。

観音さまにご挨拶をされたら、いよいよ温泉寺です。

見えてきました臨江山の山号!オレンジ色の三本線が入った白い塀が眩しいです。このスタイリッシュなお寺には、きっと素敵なご住職、そして素敵な奥さまがおられるに違いない!と思われるかもしれませんね。

あ、申し遅れました、私が現19世 滝 瑞巖住職の妻でございます!って…とんだ茶番でしたかね。いつもこの調子でふざけて怒られております。
今回は『諏訪旅』プロデユーサーから直々にお声を頂き、浅学ながらお寺をご案内させていただきたいと存じます。皆様どうぞよろしくお願いいたしますm(_ _m)

<お寺の奥さんがガイド!おめさん温泉寺を知るじゃ!>

さあこの階段を登って頂くといよいよ本堂が見えて参ります。

温泉寺は小さなお堂からスタートしておりますが、江戸時代寛永17年、この地を治めていた高島藩諏訪家が、政治の中心を茅野から上諏訪にしたことをきっかけに、菩提寺として創建しました。
白い塀のオレンジ色の三本線ですが、藩主の菩提寺の印です。ちなみに、天皇家と関わりのあるお寺は五本線を入れることになっております。

温泉寺本堂

ところで温泉寺は、実は2回も火災にあっております。特に明治の火事で本堂をまるっと焼失してしまいました。菩提寺というご縁があって、廃城した高島城内より能舞台や門などが移築され復興を遂げることができました。大玄関に置かれた鏡板とともに市有形文化財に指定されておりますので、お越しの際は是非ご覧ください。

本堂をお参りいただきましたら右脇より後方にお回り頂き、刈り込まれすぎて咲かないアジサイ畑(来年に期待!)を横目に階段を上がり、多宝塔と大地蔵さまをご覧ください。

2年前はアジサイに囲まれていました。今は……。

多宝塔は、昭和に第18世住職が尽力し檀家さんと造った比較的新しいものですが、中には、『お鉄塔』と呼ばれる諏訪上社本宮にあった神宮寺の神仏習合のご神体が祀られております。明治の神仏分離、廃仏毀釈の際、神宮寺が取り壊しになって以降、藩主の菩提寺というご縁でお護りしています。こちらは6年に一回御柱の際、御開帳しております。

多宝塔に気を取られ見過ごさないでいただきたいのが、右横の大地蔵さまです。

文化年間(1804−1814)に拝領された尊像です。

先ほど出てきました願王和尚様が京都でご説法された時、お話やお姿に感動されたお公家様の九条家から寄贈されたものです。当時は特に京都からこの大地蔵を運ぶのは、容易なことではありませんでした。しかし、道中の宿場宿場で願王和尚様がお話をされ感動した人々が「我こそが!」と次の宿場までリレー方式で運んでくれたという逸話が残っております。よほど人の心を動かす名和尚様だったのでしょうね。教えを頂きたかったものです。

ちなみにですが、お地蔵様は昔から外からやってくる疫病などからも人々を守ると信仰されてきました。今世界中を苦しめている新型コロナウィルスという疫病から私たちみんなを守ってもらいたいと願いを込めて、千羽鶴を捧げるプロジェクトをやっております。ご協力いただける方は1羽からでも構いません。是非お寺にお納めください。皆様の願いを大地蔵さまに届けたいと思います。

<国史跡に指定されたお殿様のお墓>

ご神体、大地蔵様にご挨拶されましたら右横の参道をさらに上がって行ってください。

左に多宝塔を見ながら上がっていく

和泉式部の墓があり、突き当りにはお殿様のお墓、『高島藩主歴代御廟』がございます。

2代から8代藩主の壮麗な7基の墓標、奥方や子孫のお墓が並びます。藩主のお墓は、国の史跡に指定され諏訪市で管理してくださっています。
また、御廟保存会の皆様によりお盆期間中に『御廟灯篭祭り』として、100基を超えた石灯篭の全てと、地域の皆様にご協力いただいた行燈に火を灯します。毎年8月12日夕方に開催しております。

全基に灯すのは1年に一度一日のみです。荘厳な灯篭祭り是非お越しください。帰り道も綺麗ですよ〜。

<ライトアップが綺麗な紅葉三山めぐり>

他にも、市の天然文化財指定のお殿様ゆかりの『しだれ桜』、県宝指定の織田信長ゆかりの『梵鐘』、市有形文化財指定の『舎利塔』(現在非公開)などなど、ご覧いただきたいものが沢山ございます。
とはいえ、なかなか知らないお寺に行くのはハードルが高いですよね。
そんな時は、秋に『諏訪紅葉三山めぐり』というイベントを、仏法紹隆寺さん(四賀桑原)、長円寺さん(茅野)と宗派を越えて協力し行っておりますので是非遊びにいらしてください。

温泉寺のお散歩できる庭園

広いお庭ではございませんが、お庭の紅葉が、赤、黄色、緑のグラデーションに染まりお日様の光を浴びてキラキラと輝き、夜にはライトアップし幻想的な光景に包まれます。非日常の中で心休まるひとときをお楽しみいただけることと思います。

この期間中に、普段は非公開の『経蔵』の特別拝観、期間限定御朱印(寺カードプレゼント付き)、写経燈篭、コンサート、カフェの出店、大根煮のふるまい、その他イベントなど行いますので、お楽しみになさっていてください。

期間限定御朱印 ※毎年、図柄は変わります

仏法紹隆寺の宥全住職が考案した『テラカ』(お寺カード)

結びに、
温泉寺は、地域密着型の檀家さんと共に生きるお寺です。
法事、お葬式、仏教行事は勿論、七草粥、こども食堂、人形供養、会社研修、仏前結婚式、除夜の鐘など、皆様の人生に寄り添えるよう力をいれております。
観光のお寺としては不十分ではございますが、広く皆様に心休まる空間とひと時をお過ごしいただけますよう精進してまいります。
皆様の人生が素晴らしいものでありますようにお祈りいたしまして結びとさせていただきます。

最後までお読み頂きましてありがとうございました。    合掌
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歴史

ライター紹介 滝 真木

東京都出身。 『人である限りどんな職業でも人種でも老若男女、老いること病むこと死ぬことの悩みからは避けられない』。多くの人の助けになり人生勉強できるのは看護師だ!と閃いて歴7年。結局、忙しさに忙殺され『人生は1度きりだから自分の好きなことをやらなければ』と憧れの結婚式のMCへと転身。調子にのっていた所に、現住職にスカウトされ温泉寺に入寺。

軟禁生活に苦しみながらも、『四苦八苦』という自分の中に息づいていた仏の教えを知る。最愛の妹を乳がんで亡くしたことをきっかけに苦しんでいる人の力になりたいとお寺の奥さん業にようやく向き合い、檀家さんと少しでも親しくなれるよう今毎日必死。1人ピンクリボン活動やこども食堂はライフワーク。楽しい嬉しいありがとうが一杯の人生になるよう仲間とオフザケ邁進中。3児の母。

苦手な事、、、坐禅。。。

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SPOT INFORMATION

臨済宗 臨江山 温泉寺

高島藩主・諏訪家の菩提寺として2代忠恒以降の歴代藩主の墓があります。諏訪藩主だけでなく、多くの著名人の墓も残されており、なかには平安中期の歌人・和泉式部のお墓も。和泉式部は全国各地に墓所と伝わるところがありますが、この温泉寺もそのひとつです。また、織田信長が他の地域から奪略したとされる梵鐘が温泉寺に残されています。
高島城から移築された能舞台を使った本堂や、樹齢370年のシダレ桜「忠恒(タダツネ)桜」が見どころです。

住所
〒392-0002 長野県諏訪市湯の脇1丁目21−1
電話番号
0266-52-2052
営業時間
御朱印受付 9:00~16:30
詳細ページ
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