こんにちは。諏訪旅ライターのおいちゃんです。
今回は諏訪湖畔にあるガラスのミュージアム「SUWAガラスの里」にやってまいりました!
きっかけは諏訪旅ツイッターに寄せられたコメント。
「SUWAプレミアム」の名称は聞いたことがありましたが、実は一度もショップに行ったことがなく。これは行かねば! と取材させていただくことに。
ショップの担当の方にご連絡してお邪魔したところ…
株式会社信州諏訪ガラスの里 社長の岩波太左衛門尚宏です。 |
まさかの社長!! い、いわなみだざえもん…?
社長のお名前については後ほど。
諏訪の技術力×デザイン力でつくる新ブランド
Twitterでご連絡いただいた「みんなの逆立ち独楽」の丸山さん(写真左)と、SUWAガラスの里の岩波社長(写真右)にSUWAプレミアムに込められている思いについてお話を伺いました。
「SUWAプレミアム」はどんな経緯で始まったんですか? |
私がSUWAガラスの里の代表取締役社長に就任したのは2012年のことです。自分が経営するにあたり、今までの観光スタイルは変化 していくのではないか、お客様は諏訪に何を求めてきているの かということをすごく考えたんですね。 そこで「地域の人と文化を発信する」というビジョンを持つようになりました。これまでの「日本最大級のガラスショップ」というストーリーと「地域の人と文化を発信する」との2本立てでがんばろうと。 |
地域の人と文化の発信ですか。 |
そのときにちょうど、当時諏訪市に新設された「産業連携推進室」から、諏訪市の小松精機工作所という企業が超高精度の砂時計を作ろうとしている、という話を聞いたんです。 小松精機さんは微細機構部品・微細エネルギー駆動部品を手掛けている企業なのですが、自動車の燃費をよくするための部品に小さな穴を開ける、特殊な技術を持っているんです。そこで穴を開けたときに出る合金の金属粉を、砂時計にできないかという話でした。 |
微細機構部品・微細エネルギー駆動部品を手掛けている企業が自動車の部品を作るときに出る合金の金属粉で砂時計をつくる…… (ぜんぜんピンとこない。汗) |
こちらがその砂時計なのですが、この金属粉は自動車7万台の部品から出たものです。それくらい小さい、精密な穴を開ける技術を持っているんです。 |
これが7万台分!!! この砂一粒分の大きさの穴ということですよね。すごい。 |
上下の台座は岩手県釜石市で開発されたコバルトクロム合金を使用することにしました。1年前に東日本大震災があり、被災地を少しでも応援したいという気持ちがあって。 諏訪が誇る時計の裏蓋を磨く技術で台座を研磨し、ガラスの里の職人がガラスを手掛け、デザインは御柱をイメージして4本の棒で囲みました。これで1個42,800円。 |
42,800円。砂時計としてはかなりお値段しますよね。 |
これが10日で完売したんですよ。100個限定で作ったのですが、チームメンバーみんなびっくりでした。地方新聞から始まり、全国紙、テレビにも取り上げられて、海外からも注文が入ってきました。 諏訪のものづくりの可能性というか、諏訪の技術力とデザインを掛け合わせることで、魅力的で新しいものが作れるということを実感する出来事でした。ちょうど諏訪市で産業連携の事業が始まったタイミングでもあり、官民連携のプロジェクト「SUWAプレミアム」を立ち上げることになったんです。 |
ブランドコンセプトは『澄み切った繊細さ』
SUWAプレミアムショップには繊細で洗練された雰囲気のものが並んでいますね。 |
メイドイン諏訪なら置けるわけではなくて、審査があるんです。審査基準はいろいろありますが、一番は諏訪らしい「澄み切った繊細さ」があること。次に「情熱」があることです。年に2回審査会があり、すばらしい商品が認定されています。 |
例えばこちらの単眼鏡。世界中から高い評価を受けている「ライト光機製作所」の光学技術を用いて作られています。当初は薄いブルーやピンクの商品でしたが、デザイナーとのコラボによりメタリックな色調に。 箱や説明書もデザイナー共同で作って売り出したところ、それまでの2倍も3倍も売れるようになりました。 |
こちらの鼻毛カッターも人気商品なのですが、パッケージデザインを変えることで、女性やプレゼント用にも買っていただけるようになりました。 諏訪の人が作って諏訪の人がデザインして諏訪で売る。諏訪内で完結する。これってすごいことだと思うんですよね。 丸山さんのコマもそうですよね。諏訪で完結している。 |
そうですね。企画からコマの削り出し、着色まで諏訪地域の企業で行っています。 |
丸山さんから最初にこのコマを見せていただいたとき、すごいなと思ったんです。子どもから大人まで、世代を超えて楽しめる。「グッド・トイ」という名誉な賞も受賞されていて、そういった商品を取り扱えることにも誇りを持っています。 |
諏訪の“人”が引き継いできた技術力
丸山さんはどうしてコマを作ろうと思ったんですか? |
もともと私は百貨店でおもちゃの販売をしていたのですが、弊社の社長である父が諏訪地域で精密部品を製造する工作機械の販売をしていて、私も一緒に仕事をすることになったんです。 本来なら機械の営業をすべきなんですが、お取引先の仕事を見ているうちに何かおもちゃを作れないか、と考えるようになって……コマにたどりつきました。 |
そこでなぜコマ? |
コマは誰でも遊べて流行り廃りがありませんよね。5年、10年後も販売できる息の長いものを、と考えました。5年は続けられたので次は10年です(笑) |
このコマは工作機械で寸法が正確に作られています。正しく回せば必ず回ります。製造技術や商品の精度の高さ、遊びやすさなどをご評価いただき「グッド・トイ2019」※を受賞しました。 |
このコマがひっくり返ったときの子どもたちの顔ったら、本当にうれしそうなんですよ。 |
NPO法人芸術と遊び創造協会(東京)が毎年主催している優良なおもちゃの選定事業です。保育士や幼稚園教諭、医師、看護師、児童・福祉施設職員などで構成される全国のおもちゃコンサルタント約2,000名を審査員として選定されています。
大人も「うわぁ〜✨」ってなりますね。 |
機械さえあればどこでも作れるかというとそうじゃないんです。例えば、ちょっとでも振動があると正確な寸法では作れない。機械があっても、それを扱う人に技術がないとできないんです。 結局“人”なんですよね。技術者が次の代を育て、技術が継承されてきたからこそ、諏訪の技術力があるんだと思います。 |
結局は“人”。諏訪で受け継がれてきたものづくりの技術があってこその商品なんですね。 先ほどの社長の言葉「地域の人と文化を発信する」にも繋がります。 |
諏訪を知り、諏訪を愛していただくツールに
官民連携のプロジェクトということですが、行政から見た「SUWAプレミアム」はどんな事業なのでしょうか。 |
当初は諏訪の企業の持つ技術力や魅力を発信していこうという趣旨で始まりました。昨年より、SUWAプレミアムのイベントの開催を通して、地元の人にももっと地域の誇れる魅力を知っていただく取り組みをしています。 |
確かに特に機械部品を作っている企業は一般の消費者と接点がないですよね。こうして直接手に取れる形で、諏訪の技術を知ることができてうれしいです。 今日初めてSUWAプレミアムショップを訪れましたが、「諏訪にこんな企業があるんだ!」と驚くことばかりです。 |
官民連携というと短命で終わる事業も多い中、7年も続けてこれたのは関係する事業者さんや役場の方の強い思いがあってのことで、本当に感謝です。 SUWAプレミアムを通していろんな方に諏訪をもっと知っていただき、愛していただく。そんなツールになればと思っています。 |
かつて「東洋のスイス」と呼ばれていたとか、諏訪の技術力が高いことは聞いていたのですが、今までいまいちピンと来ていなくて。まさにSUWAプレミアムを通して、諏訪の新たな一面を知ることができました。 ところでなんですが…社長のお名前の由来も教えていただけますか…? |
実家が下諏訪町の本陣岩波家というところで…代々当主が「岩波太左衛門」を襲名しており、私で28代目になります。 |
!!! |
本陣岩波家といえば江戸時代には大名の宿泊先となった下諏訪を代表する名家!! 28代目って初代は何年前になるんでしょうか……ここでも諏訪の歴史の深さを実感しました。
「澄み切った洗練さ」をコンセプトに諏訪地域の逸品が集まるSUWAプレミアムショップ。オンラインストアもあるので、ぜひ覗いてみてください。豊かな自然や深い歴史とはまた違った、諏訪の一面が見えてきますよ。
SUWAプレミアム公式サイト
https://suwa-premium.net/
ライター紹介:おいちゃんライター。信州松本生まれ、10歳から東京渋谷育ち。カルチャーショックを受け、小学生にして将来は地方移住することを念頭に生きる。大学卒業とともに縁あって茅野市に移住。諏訪旅1人編集部の編集長。 |