ビジネス農業マン! 茅野市で就農した元IT企業サラリーマン夫婦がおもしろかった。

こんにちは、諏訪旅編集長のおいちゃんです!

八ヶ岳山麓、長野県茅野市。自然豊かでありながら大きな病院もスーパーもありほどほどに便利。都心へのアクセスがよいこともあり移住希望者にも人気のエリアです。

休日は登山。自然の恵みを感じながら暮らしたい…
農業をしながら自給自足の古民家暮らし…

地方移住に憧れを持っている方も多いはず。

今回ご紹介するのは、そんな田舎暮らしを満喫しつつ、「ビジネス」としてバリバリ農業に取り組む鈴木さんご夫婦!

鈴木 紘平・鈴木 仁美
2017年に愛知県名古屋市から長野県茅野市に移住。IT企業サラリーマンから農家に転身する。2年間の農業研修の後、2019年に菊生産農家「やまファーム」を設立し、独立2年目で諏訪地域で生産量第5位になるまでに拡大。プライベートでは1児を育てながら、夫婦で登山、野菜作り、食用鶏の飼育、狩猟などに挑戦中。
やまファーム:https://yamafarm.jp/

茅野市での暮らしの素晴らしさをお話ししてもらうはずが、取材後の感想は「弟子入りしたい」でした。(どういうこと)
地方移住に興味がある方はもちろん、諏訪地域にお住まいの方もぜひ読んでみてくださいね〜!

「生きる能力」を高めるべく就農

今日はよろしくお願いいたします! 早速ですが、鈴木さんはどうして茅野市に移住しようと思ったんですか?
2人とも登山が趣味で、毎週のように山に登っていて。だったら山の近くに住んじゃえばいいじゃん!ということで、よく通っていた長野県に移住しようと決めました。長野県の中でも茅野市を選んだ理由は、八ヶ岳にすぐ登れることと、都心からのアクセスが良いことが決め手です。
山好きで移住する方は多いですよね。
農業にはもともと興味があったんですか?
そうですね。2人で登山をした帰りに「都会でのサラリーマン生活をやめるとしたら、何がしたい?」というのを徹底的に洗い出したんですよ。それで自分たちの希望を一番効率よく叶える方法として、「農業」を選びました。
私たちは2人とも、生きる能力を高めたいというのがあって。自分の力で食料や寝床を確保して、生きていきたいというか。動物の「ヒト」として強くなりたいんです。
天変地異が起きても生きていく力というかね。まあ現代社会において、そんな能力は必要ないんですが(笑)。
家庭菜園も考えたのですが、他の仕事をしながら農業をやるくらいなら、農家になって本気でやった方が効率が良いぞと。家では野菜や米を栽培するほか、鶏も20羽飼っています。あとは鹿を捕って食べたり。
鶏は卵を産まなくなったら食べています。鶏も鹿も、だいぶ上手にさばけるようになってきました。
登山も「生きる能力」を高める一環なんですよ。天候を読み、地形を見ながら、道なき道を歩いていくんです。米だけ持っていって、川で魚が釣れたらおかずが食べられる。そうやって能力を高めていく感じが、楽しいんですよね〜〜〜。
(生きる能力半端ない……)

可憐な笑顔で「卵を産まなくなった鶏は締めます」と語る仁美さん。

ビジネスとして選んだ「菊農家」の道

あれ、それでは野菜農家や米農家ではなく、花農家を選んだ理由はなんでしょうか?
自分たちで野菜や米をつくる能力は高めたいんですが、消費者に「おいしい野菜を届けたい」みたいな気持ちはないんですよね……。
えっ……。
もちろん、きれいで高品質な花を消費者に届けたいという気持ちでがんばっています。でも農業の中で「花」を選んだのは、ビジネスとして勝機があったからです。
野菜や米は、花に比べると単価が低いので、収益を上げるためにはそれなりの栽培面積が必要なんです。移住者の新規就農で、それだけの土地を借りるのは難しいと感じて。花は私たちのような立場でもやっていけると見込みました。
やるからには、しっかり仕事として成り立たせたい。だから生産量にもこだわっています。独立当初は35アール(3,500平方メートル)だった畑も、60アール(6,000平方メートル)まで広げています。新規就農でも、農業がビジネスとして成り立つという事例になれればと思っています。

ハウス栽培にも取り組み、安定した菊の生産を実現。

農業で活きる、サラリーマンのビジネススキル。

移住前はIT企業にお勤めだったと聞きました。サラリーマン時代の経験が役に立っていることはありますか?
サラリーマンの経験は、全般的に役に立っていると思います。予算と目標を立てて、目標達成に向けてスケジュールを管理する。仮説を立て、企画して、検証する。
ベテランの農家の方は経験でやっているので、エクセルなんて触ったことないよという方も多いです。でも自分たちのように新規で始める場合には、何事もデータに落とし込んでいかないと次に生かせない。
就農するというのは起業するということでもあるので、経営していく上でもしっかりデータを見ていかないといけないですよね。実は今年はかなり失敗して落ち込んでいるんですが、落ち込むにしても正確に落ち込みたいので、数字を出して計算してから落ち込んでいます。
「正確に落ち込みたい」っておもしろいですね(笑)。
私は夫より楽観的なので、「正確に落ち込みたい」とかはないですけどね(笑)。今年は独立して3年目なのですが、5年目になったときに「3年目の失敗があったからこそ今がある」みたいに話せるからいいじゃんって思うようにしています。

データを見てから正確に落ち込みたい。

あとは社会の中での立ち回り方も、企業で営業をしていた経験が生きています。
どんな仕事にも、様々なステークホルダーがいますよね。お客様がいて、上司がいて、同僚や部下がいて。いろんな利害関係がある中で、どうしたら、みんなの欲を満たしつつ、自分の欲を満たせるのか。「しがらみ」だと面倒くさがる人もいますが、前向きに捉えると、それがサラリーマンの醍醐味なんですよ。
今はこの地域で農家としてやっていく中で、茅野市は何を考えているのか、県は、同業者は、市場は……といろんな立場のことを想像しながら、自分にも利益があるようにするにはどうしたら良いか、を考えて動いています。むしろ独立したことで、より社会での立ち位置というのは意識するようになりましたね。
独立って、面倒な人間関係から抜け出す!みたいなイメージがありましたが、逆なんですね。サラリーマンの仕事術教えてほしい……。

諏訪の人にこそ知ってほしい、産地としてのブランド力

諏訪旅は地元の方も読んでいるということで、ぜひ地元の方に知ってほしいことがあるんですけど……。
はい! 諏訪地域の方も、もっと地元が好きになるメディアを目指してやっております!
諏訪地域は菊の名産地なのですが、特に若い人はあまりそのことを知らないと感じていて。「夏の菊は諏訪」と言われるくらい、全国でもトップクラスの品質を誇っています。
確かにあまり「菊の産地」としてのイメージはないですね……。高原野菜や蕎麦のイメージはありますが。
昨年、茅野市のコワーキングスペース・ワークラボ八ヶ岳で洋菊の展示会を開いたのですが、「この辺で菊作ってるんだ」「知らなかった」という声が多くて。
私たちも全量農協に出荷しているのですが、市場に出てしまうと地元の方が地元の菊を買うことができないんですよね。

やまファームでは洋菊の栽培もしています。

せっかく高品質の菊を出しているのに、地元の方がそのことを知らない。菊の生産者もどんどん減っていて、このままでは産地としてのブランドを保てないのではないかと懸念しているんです。
諏訪には、高い技術を持った先輩農業者がたくさんいます。産地のブランドを保っていくためにも、地元の方に諏訪地域で美しい菊を作っていることを知ってほしい。そして、菊生産の担い手を増やしていきたいと思っています。
先ほどもお話しした通り、菊農家は新規就農でもビジネスとして成り立つ可能性が十分にあります。今は冬の収入確保のために商品開発に取り組んでいますが、工夫次第でもっと事業を拡大し、安定して収益を確保できると思っています。
農業に興味のある方は、ぜひ声をかけていただけたらうれしいですね。

本来は蕾の状態で出荷する菊。商品開発のために開花させているそう。

独立3年目にして、諏訪地域で生産量第5位の菊農家となっている鈴木さん。今後も事業を拡大し、菊生産の担い手を育成できるようになっていきたいとお話ししてくださいました。

「どれだけ失敗しても、最終的に土地と食料があれば生きていける」となんだか楽しそうな鈴木さんご夫婦。とりあえず私はお2人に弟子入りして、「生きる能力」を高めたいと思います(パソコンとインターネットを奪われたら即死する人)。そして「夏の菊といえば諏訪なんだぜ!」ともっと自慢していきましょう!

農業に興味がある方、「生きる能力」を高めたい方、ぜひやまファームさんに連絡してみてください。お問い合わせはホームページ、SNSから。

[やまファーム]
ホームページ:https://yamafarm.jp/
facebook:https://www.facebook.com/yamafarmjp/
Instagram:https://www.instagram.com/yamafarmjp/

ライター:おいちゃん

信州松本生まれ、10歳から東京渋谷育ち。カルチャーショックを受け、小学生にして将来は地方移住することを念頭に生きる。大学卒業とともに縁あって茅野市に移住。諏訪旅1人編集部の編集長。

               

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