☑️「星糞」とは?
☑️黒耀石体験ミュージアムの展示には「ほぉ!」がいっぱい
☑️「黒耀石縄文鉱山」、史跡公園へは、軽く登山だった!
今年は、筆者が所属する趣味の団体【スワんこプロジェクト】で、児童向けの「八ヶ岳」の紙芝居を作っています。
八ヶ岳の山麓文化を語る上で、縄文時代は欠かせません。諏訪の縄文を語れば、必ず出てくるのが「黒耀石」。
いろいろ資料を見ていると、黒耀石の産地には〈星糞峠〉〈星ケ塔〉〈星ケ台〉といった地名が出てきます。
ん? 「星糞」? なぜそんな名前が付いたのか?
なんてことを調べていたら、やりましたね、8月21日の「ブラタモリ・諏訪」で!
下諏訪町と並んで有名な黒耀石の町、長和町の黒耀石体験ミュージアムで、学芸員の大竹幸恵さんに貴重なお話を伺いました。
「星糞」の漢字とは?
今回「星糞」について、体験ミュージアムの資料『黒耀石のふるさとガイドブック』と、漢字については『字統』、『和訓栞』を参照しました。
大竹さん「星糞の糞、という字ですが、漢和辞典などで調べてみてください。」
『字統』という本で調べてみると、上部の米は屎(くそ)と同じ意味。米の下に〈はん〉(ちりとりの意味の文字)、〈きょう〉(両手の意味の文字)が書かれていて、屎をちりとりに入れて両手で捨てることを言う、とあります。
更に「糞する」は、チリをはく、という意味で使われていたそうです。
大竹さん「昔の人は、黒耀石を空から降ってきた星のかけらだと考えており、そのカケラがまき散らしたように一面に広がってる様子を言い表した言葉のようです。」
河西「なるほど! 想像すると、きれいな言葉ですね。」
ミュージアムの展示に、「星糞という言葉」について、『会津石譜』という資料からの引用が紹介されています。
(『会津石譜』が載っている本を探してみたのですが、会津図書館まで行かないとなさそうでした。江戸後期に田村三省という人が書いたそうです。)
これによると、星糞は黒耀石の方言で、漆石(うるいし:漆のように光沢のある石)の形状を持つ。黒潤(黒く潤んだ色)であり、圃中より出たり(土の中から出た)と書いてあるようです。
また、『和訓栞』という江戸時代中期の国語辞典には、星糞は「石なり。ほし石ともいふ」とあります。隕石のこともいうようです。星糞は江戸時代中頃には、黒耀石のことを指す言葉として使われていたらしい、ということが分かりました。
星糞の言葉の由来については、詳しくは分かっていないので、言葉の由来についてミュージアムでも情報提供を呼びかけています。
縄文のころは、黒耀石に他の名前があったのでしょうか…☆
大竹さん「また、黒曜石の〈曜〉という字ですが、これはお日様の光での輝きを表していて、〈耀〉という字は月の光での輝きを表すそうです。長和町では、月の光を表す方の〈耀〉の字を使っています。」
河西「確かに、空から降ってきた石のイメージは、〈耀〉の字の方がつかめますね!」
(今回の記事では長和町の資料に従って、〈耀〉の字で表記しています。)
黒耀石体験ミュージアムの展示には「ほぉ!」がいっぱい
ミュージアムの中は、まさに黒耀石の情報でいっぱい!
展示室入口を入ると、採石場がそのまんま復元されているのに驚きます(第111号採掘趾の地層を剥ぎ取ったジオラマだそうです)。
黒耀石がどのように掘り出されたのか見学できます。
中ほどには、石器展示暗室などがあり、美しい形の黒耀石がたくさん並んでいます。黒耀石の矢尻の作り方なども、模型で展示されています。
世界の黒耀石の産地と、その特徴が分かる展示もあります。
大竹さん「〈ゲーム・オブ・スローンズ〉というドラマの中で、悪役を倒すために黒耀石(ドラゴンストーン)の武器を使う場面が出てくるんです。黒耀石の採掘場を訪れるシーンもあるんですが、黒耀石の岩脈を映すシーンに、思わずくぎ付けになってしまいました。黒耀石は英語でオブシディアンと呼ばれていますが、世界では魔除けの石としての意味もあるようです。」
河西「よくそういう点に気がつきますね! 黒耀石愛を感じます。知ってる方には面白い番組なんでしょうね✨」
最後は、鷹山の黒曜石の発掘に尽力をされた、地元出身の児玉司農武さんが紹介されています。鷹山は1955年に氏によって黒耀石原産地として紹介されて、今日に至っています。
「黒耀石縄文鉱山」、史跡公園へは、軽く登山だった!
職員の方に「上に上がられますか?」と聞かれ、2階があるのかと思って「はい」と答えたら、熊鈴と地図を渡されました!(カバンについている物)
上に上がるとは、ミュージアムの外の山を登ったところにある史跡公園へ行くことでした😅
今回は登山しましたが、時間によって車🚗で史跡公園まで案内してくださるそうです。
念の為ステッキを持っていて良かった! さっそく支度。
夏山は虫もいるので、長袖長ズボン、虫除けスプレーをして行った方が良いです。
中間地点の東屋でちょっと休憩。こちらの壁には、黒耀石の産地マップ(諏訪版)がありました。ここまで20分ほど。
いよいよ公園内へ。園内には所々、このような案内板が立っています。
ふと足元を見ると、光ってる! よく見ると黒耀石だらけ。これは確かに、持って行ってはいけません、との注意書きが大事ですね。
所々、第〇号採掘趾、と書かれた看板が立っています。黒耀石の採掘地点につけられたナンバーで、それぞれの特徴が書かれています。195個の採掘趾があるそうです!
中程に、建物が見えてきました!
オープン直前の星くそ館でした。まるでリゾート地のような静かな雰囲気✨
まだ中に入れませんでしたが、発掘の跡がすっぽりと、この建物の中に収まっているそうです。魅力的ですね。
さらに、「安山岩の露頭」を目指して登ってみました。説明板があちこちに見られます。
木々の向こうに、石の壁が見えました。これが安山岩の露頭かな。ここまでで、今回は帰ることにしました。
長和町の黒耀石体験ミュージアムでは、諏訪の人にも馴染み深い黒耀石の魅力を、存分に楽しむことができました。
今回学芸員の大竹さんにはたくさん興味深いお話をお聞きしました。ありがとうございました。
皆さんもぜひ、訪ねていって黒耀石を実際に見てみてください🙇♀️
[黒耀石体験ミュージアム]
〒386-0601 長野県小県郡長和町大門3670-3
電話番号 : 0268-41-8050
ホームページ:http://www.hoshikuso.jp
ライター紹介:河西 美奈子司書でスワんこプロジェクト(諏訪の文化を伝える紙芝居を作るグループ)リーダー。星と落語・講談が好きで、最近古道散歩にハマっています。 |