セピア色の記憶
我が家「守矢家」の記憶 鹿食免1

☑️ 我が家の歴史を紹介
☑️ 守矢家は、諏訪大社上社の神事を司った神長官の唯一の分家
☑️ 肉を食べても罰が当たらない、免罪符「鹿食免(かじきめん)」とは?

普段は『諏訪旅』に、マッチのラベルからその時代を旅する『タイムとラベル』を書かせてもらっている。
※『タイムとラベル』の記事はこちら

今回からは、我が家の持つ歴史や故郷・神宮寺の事を書く『セピア色の記憶』も少しずつ書いていきたいと思う。どうぞ、お付き合い願いたい。

我が守矢家は諏訪大社上社の神事を司った神長官の唯一の分家であり、大政所(おおまんどころ)として「鹿食免(かじきめん)」を発行する要職も務めた。

現在ある一番古い写真でみる我が家。(明治時代後半と思われる)

本家が守る御頭御社宮司総社と梶の老木。

1648年、大政所の職が廃止された後は、鹿乙(しかおく)として神社と甲信一帯への鹿肉の納入・販売の一手を行い、1660年ごろ交通の要所である杖突街道の入り口で茶屋を営むことを生業として代々続いてきた家である。

我が家が神長官家から分かれた時から、今年で500年余りが経つ。
今回『諏訪旅』に神宮寺の昔を書いて置きたいと願い、その許しを得た記念となる初校に、ジビエとして定着してきた鹿肉と我が家のことを書いておこうと思う。

最後の鹿乙 守矢弥平治の家族写真。前列右に曾祖父。(1882年ごろと思われる)

鹿食免(かじきめん)とは?

昭和6年の信陽新聞に「龍門紀伝」という表題で我が家のことが書かれている。

その中に「大政所(おおまんどころ)職たりし関係を以て上社神饌の第一たる鹿を一手に納入し、副業として神符の鹿肉を販賣し、鹿乙の名を馳せしは古老の皆知るところなり。當時神社より特許されし『鹿食之免 諏訪大祝』とある板木は鹿肉の箸袋に押せしものにて、この板木は往年守矢氏にて土蔵の修繕をなせし時大戸の上より発見せしものなり。」の文を見ることが出来る。

「龍門紀伝」は、最後の鹿乙となった守矢如瓢(弥平治)を取り上げながら、神長官の系譜とそれにかかわる我が家の系譜を綴っている物であった。

では、「鹿食免」とは一体何だったのだろうか?
諏訪大社への鹿肉の納入については、明治の頃までは相当量の肉が捧げられていたと考えられる。神社ではこれを塩ゆでにして御神符として一般の参詣者に下げ渡していた。
ところが、江戸幕府の頃に生類憐みの政策により【食肉禁止令】などが出され、厳しさを増した。今まで許されていた鹿・猪などの肉も対象とされたのだ。

もちろん、人々の暮らしにも影響が出ると思われるが、特に鹿肉などが神饌として提供される上社の祭りには、それらを神とともに食べる神事が多く、対応を迫られる事態となった。

諏訪大社上社『御頭祭』

御座石神社『どぶろく祭り』鹿肉

※ライター『のだオバさん』が書く、どぶろく祭りの記事はこちら

そこで諏訪神社は鹿の肉を神様にささげるためにも、なにか正々堂々とあげられるような物がなければいけないという事で、肉を食べても罰が当たらないという免罪符「鹿食免」を考え出したのである。

食肉の免罪符「鹿食免」の版木と刷り物
※版木は、諏訪に唯一残っている3枚のうちの1つで、諏訪市博物館二階に展示されている。残り2つは、神長官守矢史料館で見ることができる。

現在諏訪上社でいただける鹿食免のお札と鹿食箸。袋裏には諏訪の勘文が書かれている。使うとき唱えてください。

つまり神様が獣肉を食べてもいいと許可を与えるわけだから、これ以上の物はないわけである。これは狩猟許可証にもなっていた。

その免罪符を刷ることを上社から特別に許されたのが大政所職にあった我が家であり、大政所職を解かれた後もその版木を持って鹿肉の取り扱いをしていた。つまり、上社のテリトリーの外に「鹿食免」はあったということになる。それはなぜなのか?

第2稿へと続く。

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ライター紹介 守矢正

1951年12月4日生まれ。小学校6年まで諏訪市中洲神宮寺の旧杖突街道入り口脇の家にて過ごす。
1964年清陵高校の教師であった父が、東京で学校創立に参加する為一家五人で東京へ引っ越し、その中高一貫教育の学校に入学・卒業。日本大学文理学部に入学・卒業し、東急百貨店東横店に入社。そこで40年無事勤務し退社。
我が家が神長官の分家である事から家史を調べたり、諏訪に魅かれて父が残したコレクションを基に色々な角度から、故郷に思いを巡らせる日々を過ごしている。

               

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