☑️創業から100年続く職人魂に感動!
☑️レトロすぎる鍛冶場に萌え〜
☑️ほとんど現存しないベルトハンマーで鋼を叩く体験
大正9年創業。よく切れると評判の包丁
長野県茅野市にある『定正(さだまさ)』は、大正9年(1920年)に刃物や農具の鍛冶屋として創業しました。
よく切れると評判の包丁。
徹底的にこだわってきたのは「使いやすさ」だと言います。
100年という伝統はありますが、手法には固執せず、使い手の気持ちにそった商品を作り続けてきたそうです。
今回は、僕の古巣である『ちの旅』が、包丁つくりのモニター体験をするということで参加してきました。自分が使う包丁を、自分でつくれるなんてステキですね!
※『ちの旅』とは、「土地の人たちとふれ合い、土地の暮らしを身近に感じられる旅」を提案する旅行会社です。
詳細はこちら。https://chinotabi.jp/
レトロな雰囲気がたまらない鍛冶場
金物店を出て敷地内にある鍛冶場に向かう途中、『金山さま』が祀られていました。
火とモノづくりの鍛冶屋の神様だそうです。
「無事に体験ができますように」と拝んでいると、鍛冶場の方から金物を打つハンマーの音が聞こえてきました。
こちらが鍛冶場です。かなり歴史を感じる建物です。
中に入ると、まるで昔にタイムスリップしたような錯覚に陥りました。
一見、雑多な感じもしますが、道具はよく手入れされ、職人さんのこだわりを感じました。
こちらは鍛冶職人の小尾祐介さん。「定正」創業者の曽孫にあたります。
東京に出ていた祐介さんでしたが、およそ10数年前「定正」最後の鍛冶職人が引退すると聞いて戻ってきました。生まれ持った手先の器用さと、人一倍の努力によって今では一人で「定正」の伝統を引き継いでいます。
包丁はどうやって作るのか?
今回はモニター体験のため、通常2日間(3時間ずつ)かけてやる工程の一部だけを見せていただきました。
材料
鋼を鉄で挟んだ素材です。
鍛造
高温になったコークスの中にこの素材を入れて柔らかくし、叩いてカタチを整えていきます。
あ、あつそう……
鋼を叩くのは、昭和31年(1956年)製の『ベルトハンマー』という機械。
国内で稼働している鍛冶場はほとんどないとのこと。既に部品もないため、調子が悪くなると『ベルトハンマー』を使っている数少ない鍛冶場から部品を調達してくるそうです。
裕介さん曰く「大きく壊れたらこの機械は使えなくなる」そう。動く姿を見られるのは貴重なことかもしれませんね。
それでは叩いている貴重な動画を2つご覧ください。
すごいですね!
目で判断しながら、足元で叩くスピードを微妙に調節しているんです。
叩きすぎて鋼が薄くなってしまったら、元には戻りませんからね……。さすが職人さんです。
細かいところは、裕介さんが自ら叩いて調整していきます。
鋼と真剣に向き合う姿がかっこいいなぁ!なんて思っていましたら、「野田さんもやってみますか?」と声が掛かりました…ってできないでしょ!?
でも、せっかく体験に来たのですから、のだオバさん勇気を出して挑戦です!
この場に立つと、緊張してきました…背中は熱いし…
ビビってうまく踏み込めない…腰が引けちゃっています…
当然、鋼も変化しません……
しまいには、シャクレちゃいました(-。-;
む、むずかしい!
実際に体験してみると、職人さんのすごさが分かりますねー。
この後は、焼き鈍し、酸化皮膜取り、焼きならしなどの工程で鋼を強くしたり、整えていったりします。そして切断機で切断する型ずりで包丁のカタチにしていきます。
焼き入れ・焼き戻し
高温に熱した鉛に鋼を入れる焼き入れで、硬度を上げます。
そのままだと刃は脆いので、弱い熱の油に1時間ほど入れる焼き戻しで靱性(粘り強さ)を上げていきます。
手順は、泥を塗ったあと焼き入れ機の中に入れます。
時間が経ったら、焼き入れ機から取り出し、水に浸けたあと油の中に入れます。
その様子の動画はこちらです。
本当に何度も感じるのは、「なんじゃこの手間は!」ということ。鋼や鉄の特徴を捉えて、最大限に活かす工夫が随所にされていました。このような伝統をつくってきた昔の人ってすごいですね!
工程はまだまだ続きます。
歪み・クルイを取る
焼き入れで生じた歪みを、小槌やスパナなどを使って真っ直ぐにしていきます。
光加減で凹凸を見ます。僕も覗いてみたのですが…さっぱり凹凸は分かりませんでした。この繊細な感じは素人じゃ絶対に無理です。さすがプロですね!
調整が終わると、研磨していきます。
そして柄付けしてやっと完成です!
いや〜感動しました! すごい手間が掛かっているんですね。職人さんの「良い物を作りたい!」という想いがガンガン伝わってきました。
鉄という“モノ”に全身全霊で向き合い、魂を込める。
出来上がった包丁は単なる“モノ”ではなく、職人さんの魂が同居している。
まさに“ホンモノ”。
効率主義が溢れ返った世の中で、この“想い”が上回る商品って市場にどれだけあるんでしょうか? うちの近くに、こんな鍛冶屋さんがあって誇らしく思えました。
東京にいた頃は、職人さんと出会う機会は少なかったです。
茅野に来て包丁職人さん、信州ノコギリ職人さんにお会いし、熱い熱い生き様に触れるコトができました!
※信州ノコギリ職人さんの話はこちらです
生き様に感動したので、帰りに包丁を購入しちゃいました!「パンの切れ方がハンパない!」と妻は喜んでいます。すごく貴重な体験をさせて頂きました。ありがとうございます。
(2018.10)
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のだオバさん。放送作家。夢で「諏訪大社に行け!」と言われたのを真に受け、長野県茅野市に移住^_^余所者の目線を通して、諏訪・八ヶ岳エリアの魅力を発信!花好きから「あいつオジさんのくせに、オバさんっぽいな」と言われ『のだオバさん』に…。天然の妻・フリーアナウンサー谷岡恵里子は相当ヤバい(笑) |