☑️農家さんの規格外の野菜を救いたい!
☑️6次産業化を目指す!
☑️地域で力を合わせてつくった『信州干し椎茸』
岡谷生鮮市場で販売する『スライス干し椎茸』
多くの地域の方々に助けて頂いてできた思い入れ深い商品です。
<スーパーのバイヤーとしての限界!?>
地域に根付くスーパーのバイヤーをやっていると、色んな話が入ってきます。
「余っている野菜を売ってくれないか」「規格外の野菜を処分している」「障がいを持った人たちの仕事が減っている」など。
困っている方の話を聞く度に、どうにかしたいと思っているのですが、単独では形にならないこともあり葛藤の日々でした。
そんなある日…
目が覚める一言を言われました。
「地域をひとつの会社のように考えてみる。できる人ができる事をやったらいい」
長野県全域に展開する、長野県民にはお馴染みの外食チェーン「テンホウフーズ」の大石社長が私に仰った言葉です。
その時、私の頭の中には『農業の6次産業化』が思い浮かびました。
<四方良しの6次産業化を目指す>
農家さんの悩みの一つは、規格外の野菜です。
加工用として安価で売るか、ご近所にお裾分けするか、多くの場合、畑の隅に追いやられ廃棄処分するそうです。
「自ら加工して販売すれば良いじゃないか?」
と思われる方もいるかもしれませんが、収穫期と加工のタイミングが同時期のため、加工まで手が回らないのが現実です。加工する場合でも、保冷庫や乾燥機、袋詰めの圧着機などの設備投資も必要となります。また、外部の委託業者も多々ありますが、コスト面で折り合いがつかないそうです。
また、バイヤー目線で見ると、売れる商品をつくるのも大変なことです。
私は、この思いを込めてつくった野菜に『地域の方々のお力をお借りしながら、新しい価値を生む』。そして、『関わった方々に少しでも多くのお金が回ること』を目標に動き始めました。大石社長の「地域をひとつの会社のように考えてみる」を頼りに。
<手を挙げてくれた社会福祉法人>
野菜をどうやって加工するか?これが次の課題でした。
ある日、『岡谷子ども食堂』でご一緒している社会福祉法人『希望の里つばさ(岡谷市)』の秦さんから、こんな投げかけがありました。
「仲間たちの仕事がない。どんな小さな作業でもあれば紹介してほしい」と。
近隣の製造業や精密業からの委託作業が減り、苦慮しているようでした。
『就労継続支援B型』
生活環境の中で仕事の機会を提供し、社会性を身につけ自立を目指す場所です。
社会との繋がり、自己の訓練のための『仕事』。
仕事がしたい。人手はある。でも、仕事がない…
生活介護の利用者さんも多く、就労、作業ができる利用者さんは限られているそうです。
施設で利用者さんが得た収入は、全利用者さんに均等に分配するそうです
年収にして数千円だそうです。
私は、皮むきやカットなどの加工、袋詰めは利用者さんにも出来るんじゃないか?と思い秦さんに提案すると、「すべては利用者さんのため」と快諾していただきました。
『規格外野菜』『加工する人』と揃ってきたことで、あとは販売と意気込んでいましたが…問題が起きました。
加工するに当たり、危険の伴う機械や包丁などの刃物を使用できないことは想定していたのですが、安全装置の付いた既存のスライサーでさえ、危険とみなされ却下となってしまったのです。
<岡谷から現れた救世主>
私も一介のサラリーマン、数十万もする業務用の機械を購入するほどの投資はしてもらえません。ましてや、製品化し軌道にのる保証はどこにもありません。
ホームセンターや厨房機器業者、リサイクルショップ、インターネットなど毎日探しました。
偶然見つけた『フライドポテトカッター』
喜んだのも束の間、難点はこの格子状の刃。
椎茸は縦5枚にスライスしたいので、横刃が要りません。
試しに横刃を外してみると、バラバラに壊れてしまいました。縦刃と横刃は組み込むようにはまり互いに支え合っていたのです。
どうしたものか・・
困った私を助けてくれたのは、ものづくりの町、岡谷の技術でした。
レーザーカッター、3Dプリンターなどの工作機械を使うことができる、まちの工作室『fabスペースhana_re』の代表・浜元気さんに、レーザーカッターでアクリル板を切り抜き、新たな枠を製作していただきました。
アクリルの枠で縦刃を固定し、間に補強材を入れ強度を改善しました。
強度など、度重なる失敗。何度も何度も調整し完成に至りました。既成概念を覆す、浜さんの発想から新たな道具が生まれました。
約1㎝間隔で5枚スライスできました!
乾燥は、辰野町あんぽ柿保存会の食品乾燥機をお借りしています。
1度に50㎏を乾燥機にかけます。
旨味を損なわないために、じっくり低温乾燥で20時間。
仕上がりは約6㎏に。袋詰めして完成です。
<人気の商品に>
皆さんのお力をお借りしながらできた『スライス干し椎茸』。
お陰様で、ご年配からご家族連れと幅の広いお客様から人気の商品となりました。
私が嬉しいのは、お客様に喜ばれるだけでなく、
●余剰分(規格外やロス)の野菜を直接買い付けることで、農家さんにとって新しい収入源になったこと。
●皮むき、カットなどの加工、袋詰めで新たな雇用に繋がったこと。
●地域の業種を越えた連携を図れたこと。
●地元岡谷の技術のすごさを知れたこと。
スーパーマーケットの立場から、このメーカーだから安心ですよ。ではない。全部知った上での、正真正銘、安心安全な商品の提供ができたことです。
この地で、諏訪圏で農業を営む意義、続けられるメリットを生み出したいです。
そして次世代へのバトン。
そんな意味を込めて、自社製品に付けているオリジナルのロゴ。
『handworks suwa area』
●作り手(生産者)
●売り手(小売り)
●買い手(消費者)
●未来(地域)
私は、地域のスーパーマーケットとして、四方良しの諏訪圏を目指し、『信州干し椎茸』をつくり続けます。
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岡谷生鮮市場 副店長兼商品バイヤー 大浦篤史神奈川県愛川町出身 ですが、地域の食材、また、そんな食材を作り出す生産者さん、料理を提供する地域の料理人はもっと好き!です。 生産者と消費者の中間にいるバイヤー。 |