☑️“寒晒し”とは、夏でも蕎麦を美味しく食べるための知恵でした。
☑️真冬に玄そばを清流に晒してアクを抜く。実際に体験してきました。
☑️茅野市で食べられるのは12店舗。『呉竹房』に行ってきました。
献上寒晒しそばとは?
献上寒晒しそばってご存じですか?
僕は長野県茅野市に移住して初めて知りました。寒晒しそばとは、諏訪のお殿様が蕎麦を夏に美味しく召し上がっていただくための工夫でした!

味が濃く、風味が豊かな八ヶ岳山麓産の蕎麦

八ヶ岳山麓産の玄そば【黒い殻がついた蕎麦の実】
繊細な蕎麦は、時期によって味や風味が違ってきます。
八ヶ岳山麓では10月中旬から末にかけて蕎麦の収穫が行われます。その時期に食べる蕎麦を『新蕎麦』と呼んでいます。麺は淡い緑色、爽やかな風味で水々しさが特徴です。
しかし冷蔵庫が無かった時代、時間の経過とともに玄そばは劣化していきました。7月にもなると風味は落ち、虫もつきました…。
※現在は、水分量を16%に保つ『恒温恒湿倉庫』で加湿できますので品質は落ちません。

高山製粉(諏訪)の『恒温恒湿倉庫』。ここで3ヶ月ほど熟成させた蕎麦(1月〜2月)が一番安定していて美味しいとのこと。※蕎麦粉のこだわりを書いた記事はこちらです。
そこで、昔の人は考えましたよ〜!「玄そばに含まれるタンパク質やアクを抜けば、劣化しないんじゃないか?」と…。そして、最も寒いと言われる大寒の日に清流に晒しました。
この“寒晒し”は単に保存という意味合いだけではありません。食感がモチモチっとして甘味が強くなったり、リラックス効果があるといわれるG A B A(ギャバ)が、普通の蕎麦の2.7倍も増したりするそうです。昔の人はそこまで知っていたのでしょうか? 知っていたらスゴいですね!
“寒晒し”の方法をご紹介!
ではどうやって昔の人は、“寒晒し”したのでしょうか!? のだオバさん(僕)が、実際に体験して来ました。
寒晒し
本州一寒いとも言われている茅野市。寒風が吹く日に行われました。さ、さむい!

現場に到着!軽トラに積まれた玄そばを下ろします。
この玄そばが入った袋を、川の横に流れる堰(農業用水)に縛りつけ晒します。
なるほど! ちゃんと結ばないと流されていっちゃいますもんね。
では、のだオバさんもチャレンジです!
僕の後ろで心配そうなオジさま…大丈夫です、これくらいは不器用な僕でもできますよ!
寒い中、黙々と作業を続ける蕎麦農家さん。ほとんどボランティアだとか。
「茅野の寒晒しという文化を後世に残したい!」という思いだけでやられているそうです。このような方々のお陰で文化は継承されるのですね。頭が下がります。
この清流に1週間ほど浸し、次の工程になります。(2018.1)
寒風に晒す
寒風に晒しながら1ヶ月〜1ヶ月半かけて乾燥させます。

長寿更科(茅野市)

勝山そば店(茅野市)
この清流や、寒風に晒すことでアクが除かれ、ツルツル、モチモチっとした食感になり甘みも増します。
熟成・製粉
玄そばの水分を約16%に調整してから、高山製粉にある『恒温恒湿倉庫』で保管します。
そして玄そばの水分が安定したら、製粉し冷凍保管します。

石臼で挽いて製粉

-30度の冷凍庫で品質を保つ。

完成

でんぷん質が多い寒晒し蕎麦粉。蕎麦打ちする時は少し気を遣うそうです。
この工程を見るだけでも、かなりの手間ひまが掛かっているのが分かります。昔はもっと大変だったでしょう。お殿様に献上した蕎麦農家さんの熱い思いが伝わってきます。お殿様に生まれたかったなぁ〜(笑) 寒晒しそばを食べまくりたい!

お殿様風のチョンマゲをつける僕。(諏訪紅葉三山めぐりにて。温泉寺で撮影)
献上寒晒しそばのお味は?
一番気になるのは「いつ?」「どこで食べられる?」ということでしょう。
期間:7月17日(金)〜 ※寒晒し蕎麦が無くなり次第終了です
飲食店:八ヶ岳蕎麦切りの会を中心に、茅野市の12店舗で食べられます。
飲食店情報はこちらです。
ということで掲載店の一つ、ビーナスライン沿いにある『呉竹房』に行ってきました!
茅野市の蕎麦農家さんが丹精込めてつくった蕎麦を自家製粉し、毎朝7時から打つという江戸前本手打ち蕎麦です。
僕は蕎麦の風味が強い『縄文そば』が好きで、よく食べに行きます!

少し黒みがかった縄文そば
『呉竹房』のそば切りの様子はこちらです。
蕎麦に限らず、夏の終わりから春にかけて食べられるキノコの天ぷらなど美味しいメニューは沢山あるのですが…今回の目的は寒晒しそばです。
こちらがメニューです。
やはり食べ比べをして蕎麦を充分に堪能したいので、『寒晒し十割(100g)と縄文十割(100g)の二種もりそば』1,500円(税込)を注文しました。
この時期しか食べられませんからね! ワクワクして待っていると、きましたよ!

いい歳したオジさんが、周りのお客さんに見られながらの自撮りは恥ずかしい…
こうやって並べてみると、蕎麦の色の違いが分かりますね。向かって左、白い皿が寒晒しそば、黒い皿が縄文そばです。

※写真では全てを並べていますが、実際には一つずつ提供されます。
まずは、寒晒しそばの風味や食感をダイレクトに感じるために、水につけて提供された蕎麦をいただきます。
口に入れると、フワッと蕎麦の香りが広がってきます。そして、ほのかに感じる蕎麦の甘み。
食感はモチっと柔らかいです。縄文そばと食べ比べるとよく分かりますが、縄文そばは野性的で蕎麦の旨味をガンガン味わうのに対して、寒晒しはまろやかで優しい女性的な感じ。…分かりづらいですかね?(笑)
なんといっても、リラックス効果が期待できるG A B Aが2.7倍ですからね!この食べ比べ最高です!
寒晒しそばの歴史や、手間ひま掛けた工程を知っているので、より一層美味しく感じました! 茅野の蕎麦は、ただ美味しいだけでなく物語があります。物語を感じながら美味しい蕎麦を食べていただきたいです。
茅野市では、100年後も美しい景観を守るため『そば畑サポーター制度』を行っています。ぜひご覧ください。
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のだオバさん。放送作家。夢で「諏訪大社に行け!」と言われたのを真に受け、長野県茅野市に移住^_^余所者の目線を通して、諏訪・八ヶ岳エリアの魅力を発信!花好きから「あいつオジさんのくせに、オバさんっぽいな」と言われ『のだオバさん』に…。天然の妻・フリーアナウンサー谷岡恵里子は相当ヤバい(笑) |